2025年問題を前に介護の不安を無くしていきましょう

高齢者の睡眠時間と認知症・死亡リスクの関係

認知症予防について


本ドキュメントでは、60歳以上の日本人約1500人を対象にした10年間の追跡研究を基に、睡眠時間が認知症および死亡リスクに与える影響について考察します。特に、短い睡眠時間や長い睡眠時間が健康に及ぼす害、そして睡眠薬の効果についても触れます。

研究背景

先進国の高齢者は、入眠障害や中途覚醒などの睡眠障害に悩むことが多く、睡眠薬が処方されることも少なくありません。これまでの研究では、睡眠時間が短いまたは長いことが死亡リスクの上昇と関連していることが示唆されています。特に、睡眠時間と認知障害の間にはU字形の関係があるとの報告もありますが、東洋人における睡眠時間と認知症発症の関係は十分に調査されていませんでした。

研究方法

九州大学の小原知之氏らは、日本の高齢者を対象に、毎日の睡眠時間と認知症および死亡の関係を調査するために、「久山町研究」のデータを分析しました。対象は福岡県糟屋郡久山町に住む60歳以上の人々で、登録時には認知症ではなかった1517人(男性667人、女性850人)です。

登録時に自己申告された睡眠時間に基づき、以下の5群に分けました。

5時間未満(32人、平均年齢71.6歳、男性50.1%)

5時間以上7時間未満(405人、68.9歳、33.2%)※参照群

7時間以上8時間未満(446人、69.1歳、40.2%)

8時間以上10時間未満(522人、70.8歳、51.0%)

10時間以上(92人、73.8歳、65.6%)

結果

最長10年の追跡期間中に294人(男性110人、女性184人)が認知症を発症しました。アルツハイマー病は197人、血管性認知症は76人でした。また、282人が死亡し、そのうち66人は心血管疾患、108人はがん、42人は呼吸器感染症が死因でした。

睡眠時間が5時間~7時間未満の人々を参照群として比較したところ、年齢と性別を考慮した認知症の発症率と死亡率は、5時間未満および10時間以上の群で高くなっていました。BMIや高血圧、糖尿病、飲酒習慣、喫煙習慣なども考慮した結果、睡眠時間が短い集団と長い集団におけるリスク上昇が明らかになりました。具体的には、5時間~7時間未満の人々に比べ、5時間未満の人の認知症リスクは2.64倍、あらゆる原因による死亡リスクは2.29倍でした。

結論
この研究は、睡眠時間が短いまたは長いことが高齢者における認知症および死亡リスクの上昇と関連していることを示しています。睡眠の質と量を適切に管理することが、高齢者の健康維持に重要であることが示唆されます。今後の研究では、睡眠薬の効果や他の要因との関連についてもさらに調査が必要です。